かつてとても美しかった谷があった。若い恋人たちや旅行者の多くが訪れたその谷は、しかしいつの頃からか若い恋人たちが生まれたばかりの自分たちの赤ん坊を投げ捨てに来る場所となってしまった。それも日に20体、30体という赤ん坊の遺体が投げ捨てられるようになった。あるときふらりと現れてその谷に住まうようになった盲目の老女リントリク。彼女は雨の日も嵐の日もただ捨てられた赤ん坊を拾い埋葬し続けた。最初は彼女の存在を恐れた村人たちもいつしか彼女を畏れ敬うようになっていった。
ある夜、一人の若者がリントリクのもとに赤ん坊を抱えて訪ねてくる。その赤ん坊を若者は埋葬してくれとリントリクに願う。その後、その赤ん坊の母親である若い娘と、娘の父親である猟師が現れ...
ダナルトは、ジャワのケジャウェン(※ヒンズー、アニミズム、イスラムがミックスした民族宗教)の精神的な教えをルーツに持つ神秘主義的な作家である。shelfの矢野は、社会的、文化的、宗教的文脈や価値観のまったく異なるこの作家のテキストを丹念に翻訳するところから始め、他者理解の可能性と、生と死あるいはアジア文学における女性の描かれ方について、舞台制作を通じて探求を試みる。またこの作品は、東京-ジャカルタを結ぶ長期国際共同制作プロジェクト「交差/横断するテキスト:ミステリーとミスティカルのあいだで」の第一弾として計画された。クリエイションパートナーであるLab Teater Ciputatのバンバン・プリハジは今回、shelfがダナルトの『Rintrik』に挑むのと同じく、三島由紀夫の『卒塔婆小町』を舞台化する。
『Rintrik』の舞台を大胆に現代の都市に置き換えたい。原作の小説の持つ鄙びた土地、荒んだ大地のイメージを都市の騒乱とその中にあることの孤独とに置き換え、老女リントリクの持つ泥や埃に塗れた身体と不可思議な聖性、その清浄さについて、神経質なまでに滅菌された現代の都市空間においてそれを誇張して表現したい。イスラム教、あるいは一神教の理解は、私にはとても難しい。しかし、ケジャウェンのアニミズム的な要素を梯子にすれば、ダナルトの考える神という存在にどこか理解が届きそうな気がしている。誤解、誤読を恐れずにこの神秘主義的な小説を、まさに今、この大きな困難を迎えている現代を生きる人間のための一つの寓話劇として、時代を生きる指針を指し示せればと思う。
原作 / ダナルト
翻訳 / 山下陽子
美術、構成・演出 / 矢野靖人
川渕優子/沖渡崇史/綾田將一/横田雄平
60分を予定
The 8th Gallery (CLASKA, 学芸大学)
東京都目黒区中央町1丁目3-18 / tel. 03-3719-8121
MAP
・東急東横線 学芸大学駅東口より 徒歩10分
・JR山手線 目黒駅西口より 東急バス(黒01 大岡山小学校行き)「清水」下車 徒歩1分
恐れ入りますが、以下の事項をご確認のうえ、予約フォームもしくはこちらのPeatixサイトよりチケットのお申込をお願いいたします。
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すべてのお客様に氏名及び連絡先のご提出をお願いしております。
万が一公演関係者、及びご来場いただいた皆様の中で感染者が発生した場合、保健所に速やかに報告するとともに、必要に応じてお客様のお名前、緊急連絡先を保健所と共有させていただきます。いただいた個人情報はその他の目的以外には使用せず、公演日から4週間保管後、適切な手段で廃棄いたします。
開場時、外気を取り入れるために、ドアを開放して換気を強化します。
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・当日体調が思わしくない場合についてのやむを得ないキャンセルについては振込手数料を含む所定の手数料を差し引いたうえで、ご指定の口座にチケット代金を返金いたします。劇団事務所までお問い合わせください。
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今後の状況により公演の実施に変更が生じる場合は、shelfの公式ホームページにてお知らせいたします。
皆様のご理解とご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。
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