works - これまでの上演作品

nora(s)

2013年10月25日(金)~ 31日(木)

@アトリエ春風舎

第20回BeSeTo演劇祭 BeSeTo+参加作品

原作 / ヘンリック・イプセン

構成・演出 / 矢野靖人

演出ノート

妻でなく、娘でなく母親でもなく女でもない一人の人間として扱われることを求め、しかしそれが裏切られることによって、すべてを捨て家を出たノラ。今改めてこの戯曲を読み返すと、ここには近代以降の人間の自我の問題、「私」とは何者か? という答えようのない問いが含まれている。本公演は、日韓の演劇人を中心に国際共同制作を実施。近代的「自我」の問題に取り組むとともに、東アジアからみたヨーロッパ文化の受容史を検証したい。
矢野靖人

劇評

shelfの作品のシンプルさは、削られるものはできるだけ削ってだとか、引き算の発想だとか、そういうことで成り立っているのではない。わたしとしては久しぶりのshelf作品だった『nora(s)』において、久しぶりだったからこそと言うべきか、shelfの作品の核を垣間見たように思えた。

[...]確かに『nora(s)』では舞台装置や照明、音響などさまざまな演出効果が抑えられている。それは一見「削った」「省いた」ようである。しかし、ここでなされているのは、そうしたさまざまな方法で表現できたはずのことを、凝縮し極小化するという作業であって、なにかしら舞台における表現の要素を消失させたわけではない。そしてその行き先は、舞台にいる俳優である。[...]

わたしが『nora(s)』を観た直後の感想は、「ノイズが無い」というものだ。それは実際の音だけではなく、舞台上の設えや照明、俳優の動線、所作など舞台の上のあらゆるものについて、演出の気遣いが及んでいるということだ。俳優の手足の先はもちろん、スカートの裾が床について流れているその流れ、あるいは襞、そうしたものまで、あるいは神経質過ぎるようにすら思えるそのノイズの無さだ。
田辺剛(劇作家、演出家、劇場「アトリエ劇研」ディレクター) ”マガジン・ワンダーランド”第372号 2013年12月11日(水)

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