作 / ヘンリック・イプセン
訳 / 毛利 三彌
演出 / 矢野 靖人
[…]渋谷playroomでshelf『Hedda Gabler』。イプセンの原作戯曲は日本でもしばしば上演されているが、普通はヘッダの強力なキャラを中心化して上演される。しかしそこはイプセンに何度も挑んできた矢野靖人、ヒロインをバラバラに分解し、かつ他の人物に光を当てる。 […]
[…]その結果、ともすればプリミティブな心理劇になってしまうものがアクチュアルな寓話性を帯びることになる。shelfがやっているのは名作戯曲の翻案ではなく、それをプレテクストにした、現在日本演劇なのだと思う。 […]
ヘッダの持て余す自身の生への退屈さ。それはしかし人が自分の生について、それを能う限り劇的で充実した何ものかにしたいと求め、その先に取り替えのきかない唯一の私を想像するという、そもそもが、近代的な自我、人間中心主義(ヒューマニズム)がその内に孕んでいた“欠陥”に起因するものではなかったか?(そしてそれこそが今や、現代社会人を抑圧し狂気へと陥れる一つの”制度“となっている、といえばそれは言い過ぎだろうか?)斯様なコンセプトを元に、私たちのこの“壊れた”現実を徹底的に観察し、そのさまを克明に劇場空間に塑像してみたい。