2013年6月28日(金)~30日(日)
@d-倉庫(東京)
作 / 三島 由紀夫
構成・演出 / 矢野 靖人
[...]一方の矢野版は、三人の登場人物の他にもう一人の女性を登場させ、彼女が戯曲を幻視する作り。中央に座る彼女が背後で繰り広げられる画家や女のドラマに同化し、女たちの狂気を増幅させる。それをせりふを重ねたり微妙にずらすなどの繊細な演出と座ったままの演技で張り詰めて見せた。[...]
日本の作家のうち、三島由紀夫ほど極度に人工的で思考の純度の高い戯曲を書いた作家を、私は寡聞にして知らない。彼の戯曲で語られる台詞は凡そ日本人の日常感覚からほど遠い、美的で、装飾的で、それでいて一切無駄のない人工的な言葉だ。
かほどに極度に人工的なテキストを用いることによって、私は演劇という「場」における思考と思索、対話の可能性を改めて自分たちの手によって開き直したいと思う。
単に日常的な人間を模倣したドラマを創造するのではなく、己の存在を賭けてぶつかり合う人間のドラマを通じて、人間存在の本質を垣間見ることが出来ればと考えている。どうか、ご期待頂きたい。