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「演劇2」@下高井戸シネマ

昨夜、滑り込みで「演劇2」を観てきた。@下高井戸シネマ。

本当はこういうことについて迂闊に感想なぞ書いても良いことは一つもないんだけど、いろいろ迷ったけど、やっぱり書く。書いておこうと思う。

想田和弘「演劇2」を観た。やはり予想していたとおり、(少なくとも僕にとって、)「演劇1」より俄然面白かった。いや。面白かったというのは正確ではない。正確に言うと、絶望感とも挫折感とも、あるいは焦燥感とも言えるえもいわれぬ感覚に襲われて、ちょっと、じゃなく疲れた。

「演劇1」が、比較的創作の現場に引き寄せて、平田オリザとこまばアゴラ劇場に集う人々を「観察」していたのに対し、「演劇2」は、平田オリザと、平田オリザが、国政を担う政治家や、学校教師、あるいはメンタルヘルス学会の人々、鳥取の鳥の劇場においては、地方行政の政治家たちと対話をしたり、東京に戻っては地域の演劇人と演劇のアウトリーチ活動について話をしたりするさまを「観察」する。

演劇ファンはともかく(広義、狭義を含めた)いわゆる「政治」というもの、日本の「(文化)行政」というものに対して切実な関心のある人にはぜひ、想田監督の作品は、一度ご覧になってみて欲しいと思った。切実な、本当に切実な、この日本という国の断面図が、しかも“一人の監督の視線で切り取られた”ドキュメンタリー映画でありながらも、かなり主観を排したかたちで、有態なままに見られます。

や、正直に言うと僕は本当は、「演劇2」には徹底的に打ちのめされたのだった。間単に「面白かった」と、まるで他人事のように楽しむことは出来ない、様々な問題が、他でもない自分に、まっすぐにナイフのように切っ先鋭く突きつけられた。突きつけられ続けた3時間だった。苦しかった。本当に観ていて苦しかった。

平田オリザの言説に触れると、作家はひたすらに自分の作品を、良い作品を作っていればいいのだ。政治に首を突っ込む必要はない。などとという甘っちょろい幻想は軽く打ち砕かれる。

もちろんそれは生き方の問題なのだけれど、もちろん演劇を、あくまで趣味として人生を豊かにするために嗜むことはぜんぜん責められることではない、絶対にない。また自分の生き方として、演劇を、自分の生活の(人生の)中心に据えて生きることを選んだ人々、をも、決して責め立てるものではない。

ただし、演劇は多かれ少なかれ必然的に、いや、演劇と関わるということは、絶対に「社会」と向き合う必要がある。それが生じてくる。そのことについて、僕は幸か不幸か、全く反論出来なかった。反論する気もないが、ともかく反論の余地がまったくなかった。

しかし、所詮自分は自分の身の丈にあった活動しかできないのも事実だ。平田オリザのように国政を担う立場になってまで演劇を取り巻く環境を変革していくだけの才能も、実力も、また実践もしてこなかった。いや、何もして来なかったわけではない。僕は僕なりに様々なことを実践してきた。ただ、その結果として、少なくとも今のところは何も為し得ていない、何にも結実していないといっていいほど何もしていない自分を映画館で再確認して、絶望的な気分に陥った。

しかし繰り返すが所詮、自分は自分の身の丈にあった活動しかできないのだ。開き直りでなく、物真似をしてもしょうがないし、そもそも、出来ない。自分は自分の道を行くしかないのだ。という意味で、今回、改めて、腹を括った。

感覚を閉じることなく開いて生きる。そのことでいくら傷ついたとしても、開いて生きて行く。その覚悟だけは、ささやかながら絶望のその先の覚悟として、改めて持つことが出来た。

苦しかったけど、良い時間を貰えた。「演劇1」「演劇2」の出演者のみなさんと、想田監督に改めて感謝の意を表したい。有難うございます。矢野は、頑張ります。

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  • 2013.04.14 (日) 07:07
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  • Yasuhito YANO

想田和弘監督『演劇1』@下高井戸シネマ

「演劇とはイメージの共有で、共有しにくい人間の心の中を見た時に感動する。」

「大人は様々な役割を演じながら生きており、ペルソナ(仮面)の積み重ねが人格になる。私たちは演じる生き物である。」

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昨夜、想田和弘監督の『演劇1』を下高井戸シネマで観た。今、そのときの感覚を反芻している。短期とはいえ一時期(1999-2000)劇団に在籍していたことの在る身としてはいろいろ思うところ感じるところ多々あり。懐かしさ。悔しさ。当時の自分の(今もだけど、)本当に仕事が出来なかった在り様などが抗えない記憶として込み上げて来て、途中から普通には観れなかった。

普段、演劇にあまり縁のない人にはとっても新鮮でスリリングな映画なんだろうなと思う。僕はどうしても今の自分と自分のカンパニーの在り方行く末を考えてしまって、少し気が滅入った。自分には絶対に敵わないということ。

しかし頑張るよ俺は。僕なりのペースで、僕なりのやり方で続けて行きます。

なんとなくだけど、『演劇2』の方が僕には楽しめそうな気がしていて、来週末に観に行く予定なんだけど、期待大。

  • 2013.04.08 (月) 05:11
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  • Yasuhito YANO

山の手時事情社「ひかりごけ」観劇@文化学院講堂

昨日は、鶴ヶ島にある東洋大学川越キャンパスで演劇ワークショップの日。だったんだけど、一昨日KAAT神奈川芸術劇場で貰ったチラシ束(地点「駈込ミ訴へ」を観たときに貰ったヤツ)を、こんなん見たことない子たちだろうな、と思ったので見せていたら、一枚のチラシにみんなが、ワ! 何これ。キモチ悪い! と引っかかってどんな芝居だか興味を持ってくれたので、また3-4月のお勧め芝居を何本か取り上げて事前にメールで紹介したいてうちの一本だったので、みんなで盛り上がって急遽ワークショップを一時間早く切り上げて芝居を観に行くことに。鶴ヶ島から御茶ノ水まで大移動。

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ええ。このチラシです。山の手事情社「ひかりごけ」を観ました。

終演後には、安田さんにお願いして、学生たちから演出家への質問タイムを設けていただいたり。みんなそこそこ面白がってくれたみたいで、良かった、良かった。なにせ、これまで見たことのないような芝居だったろうから、拒絶反応というか思考停止しちゃう子もいるんじゃないかと心配していたのですが、杞憂でした。

それにしても、いやはや。男四人の男優芝居、実に面白かったです。序盤の演技に初日の危うさが少し見受けられたものの重厚なドラマを具現化、身体化、空間化する類い稀なる俳優陣に圧倒。奇を衒わずにストーリーを丁寧に手繰り寄せていくストイックな演出に感動。俳優芸術としての演劇を堪能しました。講堂の使い方も、初めて入った場所だったけど面白かったなあ。ネタバレになるから書かないけど。

でも終演後、ラストシーンの、ホントの最期の台詞について浦さんと少しだけ話しをした(ダメ出しぢゃないよ、建設的な意見交換です。)のは内緒だ。僕ぁもうファンですね俳優、浦弘毅の。とにかく凄い素敵でした浦さん。勿論山本さんも岳ちゃんも斉木さんも素敵だったんだけど、浦さんの船長が凄まじかった。特に一幕の存在感は半端なかったです。

芝居は、まだまだ本番を繰り返しながら上がってくと思います。芝居は御茶ノ水の文化学院講堂で29日(金)まで。も一回観に行きたいくらい。期待!

山の手事情社
http://www.yamanote-j.org/

  • 2013.03.22 (金) 11:35
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  • Yasuhito YANO

地点「駈込ミ訴ヘ」@KAAT神奈川芸術劇場

とても面白かった。芝居も面白かったんだけど、制作のTさんに許して貰って、終演後クローズドの高校生向けの演出家トークを聞かせて貰ったんだけど、感受性の鋭い若い、だからかえって答え難いんじゃないかなと思われるような簡素な質問がいっぱい出て、

それに対してマジなんだかふざけてんだか分からない態度で飄飄と答える三浦さんがめちゃくちゃ面白かった。

相変わらずなんともエラそうな態度で、だけど端で聞いてておいおいそんなあっさり手のうち全部さらしちゃっていいのかい? ってくらい演出の手の内全部ぶっちゃけちゃってて。

だけど高校生にはちょっと難しかったんじゃないかなあ。何しろいろんな意味で正解のない話ししかしてなかったから。僕や、たまたま劇場で一緒になって一緒にトークに潜り込ませて貰ってた大学院生のNちゃんなんかめちゃくちゃ楽しんでたけど。

何にしてもいい経験をさせてもらいました。公演は3/26(火)19:30の回が千秋楽。まだ間に合います。面白かったですよホント。4月にカフェモンタージュ(京都)でやる『CHITENの近現代語』観に行きたくなりました。

あと、この方のブログの感想が面白かった。

http://www.12kai.com/wp/?p=1518

KAATのロビーで流れてた「トカトントンと」のPVが面白すぎて、観に行けないのがとっても残念。舞台美術、コレどうなってるんだろ。美術クレジットは、山本理顕(建築家)さん。作業工程について興味津々。

  • 2013.03.21 (木) 07:55
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  • Yasuhito YANO

SCOT 「シンデレラからサド侯爵夫人へ」

昨日は、名古屋の知人、東洋大学の学生さんたちと連れだって吉祥寺シアターでSCOT「シンデレラよりサド侯爵夫人」観劇。

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面白かった! いつものメタ構造で展開していく劇構造もさりながら、個人的には、セルフパロディの要素もあった!「シンデレラ」から三島の硬質なテキストとがっぷり四つに組んで俳優が格闘する「サド侯爵夫人」への劇的な変化がとても良かったです。そして最後の台詞が、本日の稽古はこれで終わり! いやあ、しびれました。あそこまで徹底して作り込んで、これは稽古です。というのが、まるで人生のアレゴリーのように見えて。震えました。

誘った友人知人、それから学生さんたちも楽しんでくれたようで何より。

SCOTを久しぶりに(実に20有余年ぶり!)に観たという名古屋の知人が、「凄いな。これは定期的に観劇しないとダメだな。」と仰っていたのが印象的でした。ええ。鈴木忠志の演劇は永遠のマンネリズムに見えて、進化し続けています。

あと東洋大学で僕が演劇ワークショップをやっている学生さんたちを何人か連れて行ったんだけど、「衝撃的でした!」という言葉しか感想が出てこなかったのが、非常に興味深かったです。観劇経験のほとんどない彼女たちには、あの舞台はどんなふうに映ったのだろう。

安易な理解を拒絶するもの、結末を知って安心するものより、自分の価値観を補強するような物語より、理解できないものに触れて世界を広げることの楽しさを、学生さんたちには知って貰いたい。そういう意味では、彼女らにとっては、最高の題材、観劇体験だったんじゃないだろうか。簡単に言葉にして整理しないで、ごろっとした腹の中の感触を、そのままに保ち続けてほしいなと願います。

公演は24日まで。あと3ステージです。ご興味もたれた方は是非。

  • 2012.12.22 (土) 05:48
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  • Yasuhito YANO