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稽古場レポート 4日目

また冷え込みが厳しくなってきた。

少し用事があり、19時30分から見学。21時には稽古終了なので、今日は余り観られない。
昨日の暖房を切った稽古場の様子を考え、俳優たちはきっと寒かろうと思い、マツキヨで「貼るカイロ」を購入する。

稽古をしている「みらい館大明」は旧小学校を利用した稽古場だ。
懐かしい教室のドアを横にスライドさせると…暖房がしっかり効いていた。
今日は前半に演出意図や段取りを決め、後半に一回だけ通して確認をするらしい。
皆コーヒーやしょうが湯を飲んでいる、暖かそう。
…あれ?と思いながらコソコソとカイロを渡す、必要なかったなぁ。

矢野君にしょうが湯を入れて貰い、クッキーをつまみながら皆の打ち合わせをボーっと見学する。
話はずいぶんと進んでいるので、皆が何を話しているのか余り理解できない。
周りが優しくし気を使っててくれる分、なぜか物悲しくなってしまう。
場所が旧教室のせいだからなんだろうか、外が寒かったせいだろうかアンニュイな気分になる。
アンニュイって言葉久しぶりに使ったなぁ、今の子はわからないだろうなぁ、まてよ?はたしてこれは稽古場レポートなんだろうか。
とそんな事を考えていると20時30分頃から、立ち稽古がはじまった。

初めてつけられた段取りや意図をよく咀嚼して、俳優達が動き出す。
時間を気にしながら最後まで進んだ。

これで明日は最初から最後まで通せる。
まだ形になりきれていないが、明日はようやく全貌がわかる。
今日は11月24日金曜日。
名古屋入りまであと少しだ。

片山雄一

  • 2006.11.29 (水) 00:20
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稽古場レポート 3日目

今日は朝から冷え込んで、今年一番の寒さだ。
何を差し入れしようか考え、池袋西武『味咲き』の鯛焼きを持って行く事に決めた。
小倉餡&クリームチーズが入っていて、一口かぶりつくと、なにこれ?ヤベえ!なのだ。

演出の矢野君は休憩時間をあまり取らないタイプの演出家なので、朝から稽古をしている俳優達は、多分お腹を空かせているだろう。
いつの間にか夜が早くなっていた。クリスマスの飾りつけをした池袋の街を、心配しながら急ぐ。

稽古場には18時過ぎに到着。
皆は衣装を着ていた。
演出家が衣装さんに要望を伝えている間、休憩のような雰囲気になっている。

衣装を脱いだ俳優達に鯛焼きを配る。
皆、ヤベえ!ヤベえ!と言いながらむさぼりつく、一瞬で無くなる差し入れ。阿鼻叫喚。
嘘です。
美味しい美味しいと、とても上品にお食べ下さりました。

しばらくして稽古再開。
が、空気が重い。
うまくはいってないらしい。
どうにかしようと抗うのだが、どうにも良い方向に転がっていかない。

ずっと稽古をしているとこういう停滞する時期が必ず襲ってくる。

集中する為暖房を切るが、他の部屋からの雑音が聞こえてくる。
どうも昨日までの稽古場とは勝手が違う。

周りを意識し、その空間にあるイレギュラーな壁や音やモノさえも意識するよう訓練している俳優達にとって、この稽古場に馴染むには時間が足りない気がした。
優秀な俳優程、空間に影響される。

意識と身体と言葉のズレが、演出のズレにまで少しずつ拡大していく。
それに必死で抵抗していけばいくほど、物語は暗く真面目になってしまう。
真面目「だけ」になった俳優ほどつまらない者はいない。
「だけ」になった俳優は今までの経験を元に演技プランを立ててくる。
客演の多いshelfでそれは、いきおい自分達の所属している集団の表現になる事を意味する。
「shelfの表現は?」「shelfって何?」

焦りだけがつのっていく。
そこに居る全員が、周りの雑音を切り捨てるように、個人的な事柄に終始してしまったように思う。

「最後は圧倒的なカタルシスにしたい」と演出家が言う。
しかしこの空気や関係を良い方向に持って行かなければ、そのカタルシスは無い。
俳優と演出家にとってこの日は最悪の一日なのだろう。

だが、
観客の僕には、作品と稽古場が初めてリンクしてきた、そんな気がした。
カタルシスの解放の前には、耐え忍ぶ時間が無いとけっして成立しない。
この作品のカタルシスさえ作れれば、この稽古場はうまく転がっていく。
そう思ったんだ。
だから僕はいつも通りへらへら笑っていた。

名古屋に行く頃にはきっと、夜はもっと早くなり、もっともっと冷え込んでくるのだろう。
それを吹き飛ばすカタルシスが欲しいと切に願う。
マッチ売りの少女が灯す、一擦りのマッチの明かりのように、明日も稽古場に差し入れを持って行くのだ。

片山雄一

  • 2006.11.29 (水) 00:15
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稽古場レポート 2日目

今日は19時を少し回って稽古場到着。
しかし演出家の姿はない。
なかなか来ない。
俳優たちは前日の指定や台詞を確認している。

と、俳優の一人、凪 景介(Ort-d.d)が「やるか」と言って音楽を掛け出す。
音楽に合わせて、空手の型のような、ダンスのような、体操のようなことをしだす。
良く見るとストレッチや関節の稼動範囲を広げるような振り付けだ。
ハッスル体操というらしい。
2回ほどそれをやって、皆の息が上がった。
少し休憩して一服しようとするとそこに演出家が到着、間が悪い…。
手にはなんだかたくさんの紙袋を持っている。
小道具が到着した。
なんだかたくさんの紙袋には、なんだか怪しいものがたくさん入っていた。
椅子とテーブル、たくさんのロウソク、燭台にグラス、タオル…他の俳優が持ってきたボトル×2。

確認しながら皆で今日のおやつ「浅草名物 芋きん」を食べる。うまい。

ロウソクに火をつけたり、葉巻きを吸ったり、空のグラスに空のボトルでシャンパンを注いだり、文章にすると全く解らないが、当人達は今までの芝居に合わせて小道具を試している。

さて、今日は昨日の混乱からの続きだ。

稽古も昨日の続きから。
たった一日しか経っていないのにずいぶん整理されている。
ずいぶんと優秀な俳優たちを揃えたものだ。

しかし小道具には苦労をしている。
今まで無対象でやっていた演技が、本物を使った瞬間どうしてもブレてしまう。
本物は怖い。
今までの嘘がどんどん蹴られてしまう。

加えて地下の稽古場はどんどん冷え込んでくる。
俳優の身体の動きが少ない為、さきほど暖めてほぐした身体はいつの間にかこわばってくる。
昨日は順調に進んでいった稽古が少しずつ、鈍くなっていく。
瞬間瞬間を見れば面白いのだが、どこかチグハグな印象だけが浮き立つ。

気が付けば、もう23時を回っていた。

今日でこの稽古場とはお別れ、明日からはみらい館へと場所は移る。
23日は祝日で、一日中稽古らしい。

地下から地上に移るように、何かが変わって行くのだろうか。
混乱はまだ続いている。

片山雄一

  • 2006.11.29 (水) 00:10
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稽古場レポート 1日目

前記の通り、急遽shelfの稽古場におじゃましました。

稽古自体は19時から始まるとのこと。矢野君からのメールでは稽古は佳境に入ったらしく、果たしてそんな時期にレポートしてよいのだろうかと少し不安になる。
地下への階段を降り、扉越しに中の様子をうかがいながらゆっくりとノブを回す。
「おはようございます」
気がつけば、長年演劇界に居て当たり前になってしまった常識で挨拶をしていた。
今までの常識を、言葉を、身体を疑い、既存のテキストを分解、再構築する演出家、矢野靖人の率いるshelfの稽古レポートはこうして始まった。

できうるならば、私が初めてshelfの表現に触れ、戸惑い、驚き、理解したプロセスをこのレポートで再現してみようと思う。
果たしてそれが皆さんの観劇上の指針になるのか、それとも余計なお世話かわからないが、とにもかくにも全力を尽くすつもりだ。
それが、1番最初の観客の勤めだと私は思うのだ。

稽古場に来て一番最初に感じたのは、その緊張感だ。
本番が行われる七ツ寺スタジオの舞台と同規模程度の稽古場に、俳優が5人、演出家が1人。たったそれだけの人間がかなりの濃密な空気を作り出している。

その中で日常からやって来た私は、明らかに居場所を失ってしまった。

俳優は身体をほぐしストレッチをしているだけなのに、私はそこに居ることができない。何故だろうか。

多分、当日実際に彼らの舞台に触れる観客は同じ思いをするだろう。

既存の演劇に比べ、殆ど動かない俳優達。その身体とそれを支える意識の前に僕らは動けない。

私は彼らを観ていたつもりなのだが、実は彼らに観られているのだろうか。
「意識を広げて」「もっと周りを気にして」床のキシミ、息づかい、紙が落ちる音。
舞台上で偶然起きる様々な音のアクシデントにも意識を向けるよう、演出から指示が入る。
意識された偶然や私達は、いつの間にか芝居の一部に組み込まれてしまう。

目には見えないが、その場を共有した人間には確実に存在を認識できる、空間を埋め尽くそうとする俳優達のココロの働き、緊張感。

あぁ、

そこで私は、この原作がイプセンの『幽霊』だと思い出した。
演劇は風に書かれた文字だと言ったのは誰だったか。
私とあなたの間にある目に見えない何か。次の瞬間すぐに消えてしまう何か。だけれども確実に共有できる何か。
それを目に見えないはずの幽霊に託して、shelfは作品を構築していた。

そして稽古終了。

見学初日なので頭から順番に観れる訳ではなかったが、はっきり言って解らない。
まずイプセンが解らない。
名前に「プ」が付くって意味ワカンナイ。

10年以上前に『人形の家』を読んだが、あまりにも遠い過去なので忘れてしまっている。『幽霊』なんて知ってるわけ無い。
一応私はこれでも、演劇の専門学校で2年間勉強し「芸術専門士」というよく解らない資格のようなものを持っている。
狂言、日舞、クラシック、モダン、野口体操、声楽、発声、日本及び世界演劇史などなど。新劇の学校で、先生はアングラ出身で、小劇場を観に行き、静かな芝居と言われた青年団に入った。
なのに解らない。
いや、目の前で起こっている事がなんなのかは解るんだけれども、それが一体どんな意図のもとに構築されていくのかが解らない。
なのに俳優と演出は、ある共通の思いで繋がっている。

さあ説明も解らなくなってきました。

とりあえずまだ混乱しておこう。
重要なのは自分の理屈や概念で表現を判断するのではなく、相手の表現をそのまま受け取る事なのだから。きっと名古屋の観客もこの混乱を通るのだろう。

片づけと着替えをした後、池袋に移動し今後どんな形でレポートを進めていくのか少しだけ矢野君と話す。
終電ギリギリで電車に飛び込み、家についた時は1時をとっくに回っていた。

片山雄一

  • 2006.11.29 (水) 00:05
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始めに

ひょんなきっかけからshelf名古屋公演『構成・イプセン ― Composition / Ibsen』の稽古場レポートを執筆することになりました。
東京⇔名古屋を結ぶ366.0 projectの中で気がついたら僕しか稽古場に行けなかったし、そもそも稽古場レポートやりゃあいいんじゃねえの?といういいだしっぺなのですよ、ぼかぁ。
11/21~11/30まで、できうる限りshelfを追い掛けます。
正直なところで話すと、一番最初の観客になりたかったのです。

なので僕の文章やらまとめやら感想やら観劇やらを待ってる人ごめん!必ずやります。
あと新婚なのに今日も終電とかで帰って来てごめん!そりゃ寝るよね。
熱の伝播を止めたくないのです、許して下さい。

わけもわからず熱が人に伝わり、その人がその熱をまた別の人に伝えていく。
その行為はかつて演劇と呼ばれたはずなんだ。
知ってるだろ?

名古屋の熱を冷ませたくない。

その思いだけでこれからレポートを書いていこうと思います。

さあ、始めよう。
一緒にだ。

片山雄一

  • 2006.11.29 (水) 00:00
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