記事一覧

ベケット演出ノート(3)/というよりか集団と演出についての覚え書き

自分は自分のからだの外に出られない。

他者と直接つながることができない。他者に触れようとするときに、自分の手の輪郭が境界線となってそれを邪魔する。あるいは言葉が、人は言葉でしか人のころろに立ち入ることができないのに、その言葉が、自分のものではなくて借り物でしかないということが我々を疎外する。

そんなことはわかってる。でもそれでも、我々は繋がりたいのではないか。繋がりたいのだ。

表現をするということは自分が一番言いたくないことをそれと分からないように他人に知らせる行為で、結局はどうしたって自分が傷つくことだ。傷つきたくない、という人間に表現は向いていない。傷つくことが分かってて、それでもその一歩を大きく踏み出してしまう俳優が観たい。そのために、その一歩を踏み出すための仕掛けや叱咤激励や詐欺まがいの行為だって、僕はそれを必要と感じれば、実行する。

今回の構成では本来3人芝居のところ、4人で作品を再構成している。それが吉と出るか凶と出るか。観ていることはできる面白い作品にする自信はあるのだけど、これが果たしてベケットか、ベケットの「芝居」か、と問われるとちと難問かもしれない。

どうしたって、寄り添いたくなる。ベケットの深い絶望の、淵が見えない。

  • 2011.03.28 (月) 07:59
  • Permalink
  • archive::La+Labo.#1 beckett 「芝居」より
  • Comments(0)
  • TrackBack(0)
  • Yasuhito YANO

ベケット演出ノート(2)/慈愛

キリスト教文化圏の死生観は僕らには決して本当のところは理解できない。だからベケットの描く死者は僕らには理解できない。僕らにできるのは誤読することだけだ。誤読して、自分の文脈でテキストを読み直して、ひょっとすると新しい角度からそのテキストに光を当てることが出来て、そして新しい読みを提示できるかもしれない。というくらいのことだ。

でもそれが難しい。西洋では、どうなんだろう。死に方にもよるかもしれないけれど、僕にとって亡くなった祖母や祖父は非常に身近な存在だ。肩の上に感じることもあるくらい。

その身近さをもって、ベケットのいわゆる不条理だけでない、そこに含まれてある慈愛を、稽古場で捉まえられればと思っている。

先に、演出ノート(1)で、

重要なのは、生の手触りだ。

意味や価値とか、言葉とか概念でなく。

生の手触りをまっすぐに感じられるような時間を紡ぎたい。

そこにだけ救いがある気がする。

と書いたけれど、それはそのことに通じる気がする。矮小な人間を矮小に描くことで、そこを通じて初めて人間への愛が生まれる気がしている。

分かり合えない。モノローグの連鎖。決して会話が意味的に通じあうことはないんだけどでも、生の手触りだけは共有されているんじゃないか?

そんなベケット作品を作りたいと思っている。ささやかな、矮小なインパクトの少ない作品になるかもしれないが、確かな生の断片のようなものを紡ぎたい。それが今、僕がこの戯曲を通して実現したいことなのだ。

  • 2011.03.27 (日) 01:51
  • Permalink
  • archive::La+Labo.#1 beckett 「芝居」より
  • Comments(0)
  • TrackBack(0)
  • Yasuhito YANO

このスピード感だ。

S・ベケット「芝居」の映像作品を見つけた。

http://vimeo.com/28766126

そう、このスピード感なんだ。いわゆる舞台の“記録映像”ではなく、戯曲上ではスポットで処理されるべき効果をカット割りで映像的に処理したり、1コの“映像作品”として制作されているものなんだけれど、だから美術の指定とか3人の他にも背景に壺があったり同時に囁くところに(ビジュアル的にも音声的にも)ノイズが入ったり、いろいろ演出は変えてあるんだけど、でも、そう。

最初に読んだときの印象はこのスピード。このスピード感。

基本的な台詞はほとんど戯曲に忠実。なのだろうと思う。(英語だけど早口で聞き取れない。)

だけどこれ、この速度とこのリズムで生まれる効果は、日本語には馴染まないだろうな…

うーん。

きっと僕の作品はもっとすごくゆっくりなものになると思う。

写真は別な「芝居」の舞台写真。

ファイル 653-1.jpg

ベケットは資料がネット上にたくさんあっていちいちが刺激になる。

  • 2011.03.26 (土) 06:53
  • Permalink
  • archive::La+Labo.#1 beckett 「芝居」より
  • Comments(1)
  • TrackBack(0)
  • Yasuhito YANO

コメント一覧

| yasuhito url (03.27 00:51) 編集・削除

なんかどこかで見たことある俳優さんだなと思ったら上にあげたベケットの映像作品の主演俳優、アラン・リックマンだった!! 僕の大好きな俳優さんのひとり。それがベケット作品に出演してるなんて! なんか、勝手に感動!!

静岡入りしました。

今日は稽古はせず構成台本を俳優に渡す。意味不明なテキストの羅列にみんな戸惑ってる様子だけど、大丈夫。明日からの稽古場で意味を付与していきます。みなさんは稽古の流れの中で確固たる発語の衝動をきちんと捕まえてください。

宿舎はとても快適です。無線LANも飛んでいて仕事がはかどる。宿舎と稽古場等を貸して下さった提供してくれたSPACに感謝!!

東京を一週間離れることはそれなりに不安があったけど、いざ静岡に来て見ると思った以上に創作ということに今、集中できている自分がいて、ああ。東京にいた時は常に張り詰めて(疲れて)いたんだなと実感。

とはいえ、地震については東海沖大地震もいつ来るかわらかないし、予断の許さぬ状況ですが、自分たちにできることを自分たちにできる範囲で粛々と、活動を続けていきたいと思っています。

30日、無料の発表公演に一人でも多くの方に参加してもらえれば、そんな嬉しいことはないです。皆さまのご来場、心よりお待ちしております。あ、と当日は東静岡駅から舞台芸術公園まで送迎の車両が出る予定です。遠方からいらっしゃる方もぜひ!

ではみなさん、また明日。

明日からガシガシ稽古するぞ!!

  • 2011.03.26 (土) 02:07
  • Permalink
  • archive::La+Labo.#1 beckett 「芝居」より
  • Comments(0)
  • TrackBack(0)
  • Yasuhito YANO

S・ベケット肖像写真

ファイル 650-1.jpg

見れば見るほど印象深い横顔。猛禽類の顔だ。

何を考えていたんだろう。テキストを読みながらいろいろ想像するけど、けっきょく分からない。

何を考えていたのかわからない。だから面白い。想像力が膨らむ。

  • 2011.03.24 (木) 09:37
  • Permalink
  • archive::La+Labo.#1 beckett 「芝居」より
  • Comments(0)
  • TrackBack(0)
  • Yasuhito YANO