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「戦後演劇 演出家の仕事②」(れんが書房新社)

昨日、シアタートラムで [deprived(仮)] の仮チラシ折込作業。明日から始まる万有引力の 『観客席』(作/寺山修司)に森祐介が出演します。手折込なんて久しぶりに行ったけど、いやあ疲れた。疲れましたよ。ぶっ通しで2時間かかりました。1,400枚。

で、折角三軒茶屋まで来たのだから、と、その後の仕事までの30分程度を喫茶店は 「伽羅」 で一息。いまどき珍しい、カフェというより 「喫茶店」 という落ち着いた佇まいのひっそりとした個人経営の喫茶店で、いつも決して愛想がいいとは言えない年配のマスターが黙々とコーヒーを淹れている。好きです。こういうの。人は何故喫茶店に行くのか。なんて、考えてみたり。

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ところで、近代戯曲研修セミナーの流れで、折角だからこの機会に読んでおこうと、『戦後演劇 演出家の仕事②』 (日本演出者協会編、れんが書房新社刊)を本棚から引っ張り出して来て読んでます。

巻頭の菅さんと福田善之さんの対談が、のっけから頗る面白いです。何故、左翼思想が、殊に無政府主義的なそれがスタニスラフスキー・システムと結び付けられたのか。

乱暴にまとめてしまうと、所謂民衆の自発性の尊重、及びトップダウンの統治システムに対する疑義と、俳優の自立性、自発的な、演出に隷属するのではない創造者としての俳優像とが、重ねられてしまったんですね。難しい問題です。

「空は青いか。」

本当に一筋縄じゃいかない。お二人とも戦後を生き抜いてきた演劇人なのですが、軽々に判断を下すことを徹底的に回避して、歴史を語ることの困難さに正直に向かい合っていて。とても気持ちのいい対談です。若い演劇人には難しいかもしれない。けど、アングラ演劇について何か知りたいと思ったら、戦後演劇、新劇の時代のことは学んで置いて損はないかもです。お勧めします。

研修3日目。

大家さんちの梅がすっかり見頃です。まだ雪も融け残っているのに、また今週半ばには都内でもまた積雪があるかもという予報があるのに、それでも春は、きちんと、それはまあ生真面目に近づいて来てますね。

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さて。一昨日、2/15(土)は、近代戯曲研修セミナー「森本薫を読む!」の研修3日目でした。ゲストに演劇評論家の大笹吉雄さんをお招きし、2時間ほどお話を伺い、それから文学座の杉村春子主演 『女の一生』 の記録映像を観ました。実に貴重な体験でした。じっさいこれは、ひょっとしたらここ数年でいちばんかも知れない。そんなくらいの知的興奮と驚きと発見がありました。

元来僕は、それこそ大学で文学と言語学を学んでいた頃から作家の「文体」が如何に形成されるか。そもそも作家の「文体」とは何か? というのが僕の主要な関心事の一つであって、演劇を、殊に演出を始めてからは殊更に、話し言葉と書き言葉の違い、劇的なダイアローグと凡庸な会話の違い等について日頃から気をとめてきていました。

もちろんそれは戯曲に限らず、スピーチや、小説、エッセイ、評論、哲学書、果ては、例えば築地のセリで使われるあの独特の話し言葉やスポーツの実況中継に見られるような独特の形式やらと、時間を見つけてはいろいろと探っているところでしたので、大笹さんのお話は非常に示唆に富んだものでした。

特に、当時は、戯曲が活字で発表されてから当時の新劇団がその作家に上演を依頼していたと言う話。また森本薫など、翻訳劇でない日本の創作劇(という言葉には、僕はちょっと抵抗を感じる部分があるのですが、それはさておき)は、すべて岸田國士の同人誌「劇作」に始まるのだ。という話など、

果たして作家(特に劇作家の戯曲の言葉)は如何にして形成されるのか。それは日常触れていた周りの人間を観察することによってか、自分の観たことのある舞台の俳優の演技にか、それとも先行する劇作家の影響か、あるいは、というかおそらくきっとそれら全てが影響しているのでしょうが、

であれば何を参照すれば、古典的テキストのより深い理解に達することが出来るのか? 等々、僕のなかでも模索しながらやもやとしていたものが一つ、すっきりと、これから学ぶべき一つの指標として、道筋を与えて貰えたような気がしています。

また文学座の、杉村春子主演の 『女の一生』 の記録映像についても、本当に驚きと発見に満ちた、あっという間の2時間半でした。すべてを書き出そうとするとキリがないのですが、少しだけ箇条書きにすると、

・自分が戯曲を読んでいる時に思っていた以上に、俳優みんなの発語の速度がおそろしく速かったこと。

・大笹さんの、舞台における俳優の演技は「見立て」である。という言葉が、なるほどこれか! という感触で、皮膚感覚で理解出来た。その一方で、ある種のリアリティというか説得力を獲得するにあたって、実は日常の写実のような演技は当時(?)の新劇俳優は誰もしてなかって、特に杉村春子さんの演技なぞはそこから遠くかけ離れたものであったということ。

・予想以上に観客が“笑っていた”こと。そして演出も俳優もおそらくそれを狙っているということに驚き、なるほど確かに、「喜劇」とはかくあるべきか。と思ったこと。

・上のことから、ふと連想したのが小学生の頃、毎週土曜日の午後に放映されていて、毎週学校から帰ると必ず見ていた「吉本新喜劇」! で、大衆(と言う言葉は今となってはこれは死語になってしまっているとは思いますが、)を相手に仕事をするということはこういうことなのだ。ということ。

等々。あと疑問点? として残ったことには、

・ああ、前景はリアルに装置を制作しているのに、背景は書き割りなんだなあ。

・後半の子役は子供が演じているのにメインキャストは少年時代から老いて後まで一人の俳優が演じきるのだな。

と、そのあたりの矛盾? について、どう落としどころを見つけていたのか。それは単なる、例えば袖幕はあってないもの、触ってはいけない、袖に引っ込んだらその人はその場からいなくなったものとしてドラマは進行する。等という、演劇における所謂「お約束」の一つだったのか知らん。等々、いろいろな宿題を貰いました。

研修、楽しいです。楽しい。うん。楽しいですよ近代戯曲研修セミナー。

最終日、ドラマ・リーディングとシンポジウムはもちろん、研修日もご希望があればご参加いただけます。ご興味をお持ちになられた方がいらっしゃいましたら是非、お気軽にお問い合わせ下さい。

研修2日目。

そして今日は近代戯曲研修セミナー「森本薫を読む!」の研修2日目。ちょっと早めに家を出て、西新宿三井ビル内にあるスターバックスで企画担当の川口君が用意してくれた資料を読んでます。タイニイアリスの西村博子さんの評論と、西村さんが聞き手をなさった森本和歌子夫人聞き書き。

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日本の近代戯曲研修セミナー vol.10 「森本薫を読む!」

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「日本の近代戯曲研修セミナー」は、文化庁と日本演出者協会の主催事業です。

故・観世榮夫氏が、早稲田大学演劇博物館との共催で近代戯曲のリーディング上演として提案されたのが発端なのですが、実現の直前にご逝去なされたため、その遺志を継ぐかたちで演出者協会が実施してきました。2010年1月より開催されてきて、東京開催は今回で10回目となります。

この研修セミナーは最終的に下北沢「劇」小劇場でドラマ・リーディングとして作品が上演されるのですが、今回の森本薫戯曲について、(正確にはラジオドラマのシナリオですが、)ドラマ・リーディングの演出を矢野が担当させて頂くことになりました。また、shelfからは川渕優子と春日茉衣も参加致します。

研修では、単に、リーディング作品を上演する。ということを目的にするのではなく、作品、作家の研究、実際上演する上での問題点の考察などを議論し、試行していく予定です。日本の近代戯曲が持つ演劇的価値、上演意義なども合わせて考察していきます。

最終日のドラマ・リーディングの観劇及びシンポジウムへの参加のみならず、それまでに8回実施される「研修」にもご参加いただけます。

というわけで、はい。今日から一ヶ月、森本薫と付き合います。ご興味をもたれた方はぜひお気軽にご連絡くださいませ。

矢野靖人

◎日本の近代戯曲研修セミナーin 東京◎
「森本薫を読む!」
明治期以降の劇作家が新たな演劇を求め、何に挑んだかを探る。
全8回の《研修》と2日間の《リーディング&シンポジウム》開催!!

課題戯曲: 『薔薇』、『記念』、『生れた土地』
参考戯曲: 『みごとな女』、『華々しき一族』、『怒涛』、『女の一生』他

■研修日(全8回)
研修の様子を見学できます。また、議論への参加も歓迎します。
料金:各回500円(テクスト代は別途実費の場合あり)※協会員は無料

2月7日(金)13:00~17:30(芸能花伝舎1-2教室)
「戯曲に触れる」
まずは課題戯曲を声に出して読んでみることで、作品の言葉に触れると同時に、それぞれが戯曲あるいは作家に対しての課題を持ちよりそれについて議論する。

2月13日(木)13:00~17:30(芸能花伝舎1-2教室)
「作家を知る1」
森本薫の年表を見ながら、森本薫の人生を追いかける。森本薫の文学的資質やその目標を探り、また、時代との関わりの中で、どのような変化が訪れているかを研究する。

2月15日(土)15:00~22:00(芸能花伝舎S-1A教室)
「記録映像を見る」
『女の一生』のビデオ上映のあと、ゲストを招いてのトークセッション。
15:00~トークセッション 「『女の一生』を巡って」 ゲスト:大笹吉雄(演劇評論家)
17:00~ビデオ上映 『女の一生』(文学座)

2月18日(火)17:30~22:00(未生文庫)
「作家を知る2」
二日目の研修から発展した形で、作家研究を行う。

2月25日(火) 17:30~22:00 (未生文庫)
「戯曲を読み込む」
課題戯曲の精読を行い、戯曲の構造などを分析する。

以下の3日間はこれまでの研修成果をもとに、リーディング発表に向けて研修を重ねる。
3月2日(日)13:00~22:00 (芸能花伝舎1-3教室)
3月4日(火)17:30~22:00 (未生文庫)
3月6日(木)13:00~17:30 (芸能花伝舎1-2教室)

○研修会場
・芸能花伝舎(東京都新宿区西新宿6-12-30、東京メトロ「西新宿」駅より徒歩約6分/「新宿」駅西口より徒歩約15分)
・未生文庫(東京都豊島区駒込3-3-4、JR/東京メトロ「駒込駅」より徒歩約5分)

■ドラマ・リーディング&シンポジウム 2014年3月10日(月)、3月11日(火)

○日時
3月10日(月)
19:00~ドラマ・リーディング 『薔薇』、『記念』、『生れた土地』
20:20~シンポジウム 「森本薫における『恋愛』とその現在性」
パネラー/高石宏輔(カリスマナンパ師/カウンセラー)

3月11日(火)
19:00~ドラマ・リーディング 『薔薇』、『記念』、『生れた土地』
20:20~シンポジウム 「日本近代演劇における森本薫」
パネラー/大笹吉雄(演劇評論家)

○会場
「劇」小劇場
東京都世田谷区北沢2-6-6(小田急線/井の頭線「下北沢」駅南口から徒歩3分)

○料金
各回 2,000円※協会員は無料 ※チケットをご購入の方は、シンポジウムには両日参加可能です。

リーディング演出/須藤黄英(劇団青年座)、矢野靖人(shelf)
研修参加者/青井陽治、秋葉舞滝子、大谷賢治郎、春日茉衣、川口典成、川渕優子、黒川逸朗、小林拓生、篠本賢一、千賀ゆう子、中村哮夫、林英樹、由布木一平 他
制作/三村里奈(MRco.) 総合プロデューサー/川口典成

文化庁委託事業「平成25年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」
主催/文化庁、一般社 団法人日本演出者協会
企画制作/一般社団法人 日本演出者協会

○お申込み方法
下記必要事項の上、メールまたは郵送、FAXにて下記までお申込み下さい。
「お名前(フリガナ)」
「性別」
「電話番号(FAX番号)」
「ご住所」「メールアドレス」
「研修見学ご希望日」
「リーディング&シンポジウム参加ご希望日時」
「枚数」
※メールでのご予約の際は、件名を「チケット予約」として専用メールアドレスまでお申込み下さい。

○お申込み・お問合せ先
一般社団法人 日本演出者協会(担当:川口)
〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-12-30 芸能花伝舎3F
TEL:03-5909-3074 | FAX:03-5909-3075 | 携帯:090-1016-7092
専用メールアドレス:kindaigikyoku@yahoo.co.jp
http://jda.jp/

○シンポジウムパネラーご紹介
・大笹吉雄(演劇評論家)
大阪市生まれ。早稲田大学文学部卒業。『演劇界』 編集部を経て、演劇評論家。著書 『花顔の人。花柳章太郎伝』(講談社)、『現代演劇の森』(講談社)、『日本現代演劇史』(白水社)、『女優 杉村春子』(集英社)、『最後の岸田國士論』(中公叢書)など。

・高石宏輔(カリスマナンパ師/カウンセラー)
催眠術や非言語的な身体コミュニケーション技法、心理学に通暁している。水商売などのスカウトマン、ナンパ講習講師、カウンセラーという経歴を持つ。最近では、社会学者・宮台真司とのトークが書籍化された(『「絶望の時代」の希望の恋愛学』)。Twitter2lesyeauxx Web「ナンパ、催眠を通して見出した他者と話すということ」

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