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「沈む日本を愛せますか?」

2009年3月-2010年9月に渡って雑誌「SIGHT」(ロッキング・オン)上で行われた、内田樹と高橋源一郎の対談集。及び、続編の2010年9月‐2012年3月行われた対談をまとめた「どんどん沈む日本をそれでも愛せますか?」読了。どちらもインタビュアーは渋谷陽一。

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55年体制成立以降続いてきた社会システムの劣化について、政治の言葉の機能しなさについて、あるいは政治と文学との関わり方について書かれた「沈む日本を愛せますか?」と、

尖閣問題(国境問題)から震災後の政治・経済を含むイデオロギーの在り方について書かれた「どんどん沈む日本をそれでも愛せますか?」、三日ほどで一気に読んでしまった。

特に、右肩上がりの成長モデルはもう無効だ。静かに縮小していく社会で如何に楽しく生きるか。それが問題だ、という話が凄く面白かった。

あるいはアンチ・パターナリズムの終焉と限界について、それをアメリカやイギリスのフリースクールや広島で30年反原発運動をしている祝島のことなどを事例に挙げながら分り易く、在り得べき日本の将来像を提示する。あるいは、福島の災害を第二次世界大戦の終戦や関東大震災にに例えることの不可能さ、それには120年単位で、明治維新、否、戊辰戦争から考えなければならない、とか。

ところで、そもそも経済は成長するものだっていう実感が、僕らバブル後の世代にはない。何となくそういうものだって、刷りこまれているけど、そしてそれが生きるための選択肢を少なくさせてる実情は本当に怖いことなんだけど、(バブル崩壊が91年だとして、当時僕は21歳、僕は札幌で、大学生だった。これが僕の5つ上の世代だと既に社会人であってリアルにバブルを経験してるんだと思う。逆に5歳下だと、また高校生ってまだ経済に縁遠い生活をしていると思うから、ぜんぜん違う感覚を持っていると思う、)とまれ僕らはバブルを実感として持ってない。今回の震災で「本当の意味で戦後が終わった、」と言われても同じく。これは逆に「戦後」という言葉に実感が持てない。(今が目には視えない戦争状態だ。というのならそれは直観的にわかる。)そういったことのいろいろの分らなさに、不可能ながらもおじさんたちからの目線なりに説明が加えられていて、すごく頭の中がクリアになった気がした。

橋下徹は嫌いだけど、日本の戦後以降の時代が生み出した必然的な存在だという言葉にはちょっと衝撃を受けた。なるほど確かに、彼がウケる理由もそういうふうに説明されるとよく分る。

とまれ対談なので、口語体で書かれていて、とても読みやすいです。震災後の対談を含む二冊目がやっぱり緊張感が高くて読み易かったけど、一冊目も言ってることの基調はまったく同じで。自分がこれからどう生きていくべきか、考えるにあたって非常に示唆的でしたあと、僕は恥ずかしながら政治や経済に本当に疎いので、ホント、勉強になりました。良書との出会いに感謝。

  • 2012.10.11 (木) 07:53
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  • Yasuhito YANO