中日新聞夕刊 2013年3月30日(土)



安住恭子の舞台プリズム
shelf 「edit」 力強い言葉、明白だが…


 古典や近代劇など既成の戯曲を再構成し、力強い発語によって、独特の劇世界を作るshelf。今回の「edit」(矢野靖人校正・演出)は、ギリシャ劇や現代作家の演説、エッセー、小説などを構成した作品だ。それらの断片をつなぐことによって日本の今に対する強いメッセージを発する舞台だった。

 冒頭は「ゲド戦記」などで知られる作家K・ル=グウィンが、大学の卒業式で行った演説。これから社会へ旅立つ若者たちに、成功を目指す上昇志向ではなく、弱者への共感を呼びかける。そして、追うの命令に背き、反逆者である兄を弔った女を描くソフォクレスのギリシャ劇「アンチゴネー」や、夫との関係が対等ではないことに目覚めた妻を描く「人形の家」だまされた側の責任を問う伊丹万作のエッセー「戦争責任の問題」などへと続く。

 つまり、支配する者とされる者の関係と、その内実に対する問題がさまざまな言葉で語られるのだ。保坂和志の小説では支配が政治の問題だけでなく、経済的支配によって欲望さえもがコントロールされ、もはや主体性も失っていることが指摘される。

 ル=グウィンの演説やアンチゴネーのせりふをまるで言葉の精霊が宿るように力強く発語する川渕優子、ノラのせりふをささやきで表現した春日茉衣と、出演者たちはそれらの言葉をしっかりと届け緊密な空間を作った。そしてメッセージも明確に伝わった。しかしそれが露わに過ぎた感もある。やや直接的に過ぎるのだ。演劇的膨らみの背後からそれらが浮かび上がれば、さらに魅力的だったと思うのだが。

(十日、名古屋・七ツ寺共同スタジオ)




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