中日新聞夕刊 安住恭子の舞台プリズム 2013年1月5日(土)



安住恭子の舞台プリズム
長久手市文化の家×三重県文化会館プロデュース 「三島ル。」
2劇団、演出の対比 鮮やか

 愛知県長久手市文化の家と三重県文化会館が、三島由紀夫の「近代能楽集」を二つの劇団が競演するというユニークな企画を、共同制作した。「三島ル。」shelfと第七劇場の演出家、矢野靖人と鳴海康平が演出を競った。
  長久手ではshelfが「弱法師」、第七劇場が「班女」の上演で、三重では前者の「班女」と後者の「邯鄲」 というプログラム。両者とも古典を新しく表現する作品作りをしているが、矢野は言葉と身体を重視するのに対し、鳴海は美術を含めた視覚的表現を追求している。今回の舞台にもそれの特徴がはっきりと表れ、特に「班女」の競作は全く異なる作品かと思えるほどだった。
  「班女」は、男を待ち続けるあまり狂気となった女と、彼女を庇護する女性画家の元に、男がやってくる話。画家は女を独占しようと男と対立し、一方、女は彼が待ち焦がれた男と気づかないという皮肉な幕切れで、「待つ」と「追う」という行為を通して恋の狂気を突き詰めた作品だ。特に女を庇護しつつ彼女を求め続ける画家の狂気が浮かび上がる。
  鳴海版は、一つ一つにスポットライトが当たる小さな箱庭が並ぶ舞台美術を前に展開。その美しく静かな世界の中で、画家がせりふを言いながら赤い絵の具をまき散らし狂気を分かり易く見せた。一方の矢野版は、三人の登場人物の他にもう一人の女性を登場させ、彼女が戯曲を幻視する作り。中央に座る彼女が背後で繰り広げられる画家や女のドラマに同化し、女たちの狂気を増幅させる。それをせりふを重ねたり微妙にずらすなどの繊細な演出と座ったままの演技で張り詰めて見せた。(十二月1日長久手市文化の家、九日三重県文化会館)


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