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La Traviata !

鈴木忠志演出オペラ 『椿姫』、素晴らしかった。本当に素晴らしかった。

道をはずれた女がひく死へのカード

作者ヴェルディが登場し、夢見た
新「椿姫」

中丸三千繪のヴィオレッタ、佐野成宏のアルフレード、堀内康雄のジェルモンと華と実力を兼ね備えたキャスト、オペラに定評のある飯森規範親
東京フィルハーモニー交響楽団で贈る。
演出は演劇の巨匠鈴木忠志。

ヴェルディが孤独のうちに作曲をしていると、“La Traviata”=道を踏み外した女ヴィオレッタが幻想の中に現れ、いつしかヴェルディ自身がアルフレードとなり、 『椿姫』 の物語が始まる――。

まったく新しい『椿姫』の幕が、今開く。

しかし驚いたのは鈴木演出が、今や演劇よりもオペラのほうが合ってるんじゃないかってくらい劇世界がしっくり来ていたこと。反ナチュラリズムの演技様式が、ソリストにも合唱団にも徹底されていて、余計な動きの全くない、しかしその場の空間の圧倒的なリアリティ。

作家が (今回の場合は“作曲家”のヴェルディが) 創作するということについての、いわば妄想の力の極度の集中を介して劇構造を立ち上げる、という、これは鈴木忠志の作劇に際しての常套手段なんだけども、それが言ってしまえば他愛もない、ただのよた話に過ぎない 『椿姫』 をして、作家という存在を通して人間の妄念や存在の不条理を描く複雑で奥深い作品に仕上げている。

考えるにオペラといういわば奇形の表現形態の、その圧倒的に人工的な芸術の在り方と、鈴木忠志の研ぎ澄まされた美学、極度に様式的な演劇が、完全にハマッてたのだと思う。結果的に。

人生初のオペラがこの作品で本当に良かった。鈴木忠志にはもっとどんどんこういったオペラ作品を作って欲しいと思う。

しかし 『椿姫』、最初の台詞がいつもの「あなたまだ幻を見ますか?」「いいえ。前ほどじゃありませんよ。」だったのには笑ったなあ。

  • 2009.12.12 (土) 16:18
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  • Yasuhito YANO

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