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shelf名古屋公演プレ企画第2弾/ただひたすらに読むための戯曲を読む講座#1「イプセンを読む」

 予定時間より30分遅れて駅に到着した私は急ぎ足で、ワークショップ会場へと向かう。今回の会場「大門庵」は特定非営利活動法人・起業支援ネットの旧事務所になっているとのこと。以前は遊郭があったというそのエリアを歩いていくと、居酒屋などが建ち並び、何となく往時の残香が漂う。
 「大門庵」の看板を見つけてガラガラと引き戸を開けると、以前は「梅乃屋」という居酒屋だったこの建物は、おっとりと時間のとまったようなレトロな雰囲気。不思議な場の雰囲気を味わいつつ、「すいませーーーーん!」と、声をかけた。

 朗読のワークショップだと聞いていたのに、2階ではさっきから“ドタンバタン”と人が動き回る音がしている。おまけに、ときどき楽しそうな笑い声まで。ヘンだなぁと思いつつも、案内のスタッフを待つ。  
 
 2度目に出した大声で、ようやく担当スタッフが降りてきてくれ、2階へと案内される。中では数人の男女が腕を振りまわしたり、よじったりしてにぎやかだ。「…イタタタタ。」とか「ひえぇー、結構キツイなぁ。」とか言いつつ、楽しそうな雰囲気。声をあげている参加者の表情を見ると、みんな額にうっすら汗までかいている。「…そろそろ、身体が起きてきたかな?」矢野氏が参加者の様子をうかがいながら着席を促すと、それはワークショップ開始から、おおよそ30分ほど経過した時刻。聞けば、矢野氏はこうしたワークショップや稽古の前には身体のウォームアップを欠かさないとのこと。参加者は、身体が“起きた”状態で講座内容に入っていく。
 
 参加者は女性6名、男性3名の男女計9名。名古屋で活躍する役者や、先ほど行われたshelf名古屋公演プレ企画第1弾『演劇オープンラボ』に参加したという方、メガトン・ロマンチッカーの作品をよく見に行かれるという会社帰りの男性、当日になって参加者に強制連行(?!)されたという女性の方など個性豊な面々。今回のワークショップはタイトル通り『ただひたすらに読むための戯曲を読む』講座なのであったが、用意されたのは名古屋公演で上演される『イプセン』の『幽霊』。(古典の戯曲と呼ばれるものは書籍になっているとのこと)。参加者それぞれが1冊づつ手にして、いよいよ『ひらすら読むための』講座がはじまった。 
 
 読みはト書きも含めて、最初のページから。適宜、読み手を割り振りながら進んでいく。「…何かを表現しようとするのではなく、ただ“読んで”下さい。ただし、“よく考えて”。(ト書きは)情景が目の前に浮かんでくるように、(セリフは)誰に向かって、どういう状況で言われているのかを、ゆっくりでかまわないので考えながら読んで下さい。」矢野氏の指示を興味深そうに試していく参加者。「…読んでいる人は、ときどき本から目を離して周りの人をよく“見て”下さい。聞いている人は本をそんなに気にしなくてもいいので、読んでいる人を“見て”あげて下さい。…ヘンな昔の話し言葉も文面通り読みましょう。“ふうむ”とか“うっふん”とかも省かない。…集中を途切れさせないで。」矢野氏が指示をするごとに、参加者の「読み方」はどんどん変化していく。しかし、役者として自分なりの方法を持っている方は、やはり普段の自分の読み方が出てしまう。「…じゃ、ちょっと止めましょうか。もう少し落ち着いて読んでみましょう。…14歳になったつもりで。…声を出すかわりにホワイトボードに板書でやってみてもらえる?…肩と首を動かさないで読んでみて。…そうそう、動かさないで。」矢野氏は状況によって指示を変えつつ、自らは本と参加者をよく“見て”いるようだった。…読む講座といいながら、その場にいる人たちは人と本のそれぞれを非常に集中しながら“見て”いるのが印象的だ。不思議なのだが、この“見る”という行為が緊張感を生んでいた。“見る”ことによって、相手との距離を意識するのかイスをわざわざ離す参加者があったり、出来事の自然な“間”が生じたりして、思いがけないリアリティが立ち上がったのだ。この本を初めて読むという参加者がほとんどという状況で、これはとても興味深い現象だと感じた。終盤は矢野氏がト書きを読み、コントロールパワーのような不思議なト書きの流れに、読み手が巻き込まれる形で時間切れとなった。

 参加者からは「古典を読むっておもしろいですね。」「事前に少しだけ読みましたが、楽しくなかった。みんなでこうして読んでみるとすごく楽しく感じました。」「自然に(演技)しようと思ってやっていたけど、何が自然なのか分からなかった。だけど今日、何だかスッキリしました。」などの感想が述べられた。時間は大幅に予定を越えてしまったが、会場を出た後も参加者同士で話しこんでいたり、矢野氏と踊りながら(?!)会話している参加者がいたりと、終盤の興奮が参加者からは抜け切れていない様子だった。この盛り上がりからみて、このワークショップは成功だったのではないだろうか。矢野氏自身も「実は今回のワークショップは初の試み。でも、すごく楽しかった!」と笑顔を見せている。

 間近に迫った名古屋公演 「構成・イプセンーComposition / Ibsen」で矢野氏の演出像がいよいよ明らかになる。見逃せない公演になるはずだ。

 取材/文責 Arts&Theater→Literacy:かめだけいこ

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2006年11月26日 20:16に投稿されたエントリーのページです。

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