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メガトン・ロマンチッカー『マイ・フェーバリット・バ─────―ジン』

☆ 2006年11月11日 19:00~ 千種文化小劇場
メガトンロマンチッカー 『マイ・フェーバリット・バ─────―ジン』
 作・演出:刈馬カオス/出演:メガトン・ロマンチッカー 

 名古屋の人気演劇カンパニーの1つであるメガトン・ロマンチッカー。彼らの公演が行われた千種文化小劇場を訪れると、まず観客層に驚いた。ずいぶん若い観客が多いと感じたのだ。刈馬の扱うテーマは今回の『マイ・フェーバリット・バ─────―ジン』では「障害者向けデリバリーヘルス」であり、前回の『モンスターとしての私』では作品構想直後に偶然起こった佐世保での小学生児童による同級生殺人事件と1997年に神戸で起きた酒鬼薔薇聖斗事件を絡ませた作品など、非常に重いテーマである。それにも関わらず観客層に若者たちが多いというのは、重いテーマながらもそれらを(刈馬いわく)『冒険演劇』や『恋愛演劇』と銘打って、ポップに仕上げていることに起因しているのではないだろうか。

 メガトン・ロマンチッカーは劇作家・刈馬カオスの個人ユニットとして2000年に発足したカンパニー。2年間の公演ブランクを挟んで、劇団として再起動している。『…ある場所に感動したとします。例えばそこは春風吹く草原。草の音が心地よく鼓膜を震わせるでしょう。その喜怒哀楽ではカテゴリできない種類の感動を、どう処理したらいいのか。その場所と空気の機微。そして私と世界という関係性。私たちはその再現性を求めて活動します。場と空気に重きをおき、ただそこに存在すること。そして生まれる劇的関係。私たちは存在することに最注目して、演劇という表現にこだわります。そして絶望と、それでも希望を捨てきれない人々のノタウチマワる姿を見つめる。-後略-』カンパニーの公式サイトの「はじめに」にはこう書かれている。
 『絶望と、それでも希望を捨てきれない人々のノタウチマワる姿』今回の作品は、この言葉をとても如実に体現していたように感じた。

 円形舞台。4~5つのカラフルな背もたれのデザインチェアーと、真っ赤なソファが置かれている。舞台中央にはリンゴが1つ。沈痛な面持ちで登場した男はリンゴを手に取るが、じっとリンゴを見つめたまま戸惑うように動かない。後から登場した男がチェアに腰かけた女たちとともに、リンゴを手にした男にも手にしたコンビニ袋から缶ジュースを1本づつ手渡していき、リンゴは忘れ去られたように暗転の中に消える。「プシュッ」と缶ジュースが開く音…。
 物語には中心がない印象で、「障害者向けデリバリーヘルスの事務所」内の人物たちがさまざまに人間関係を絡ませながら展開する。「死」と「性」に関するキーワードが印象的なセリフとして置かれていくが、部分的にセリフと登場人物との間にキレツのような違和を感じた。セリフを発するときの役者の身体にもう少しの葛藤が欲しいところか。

 ラストシーン。男は冒頭の終盤と同じように舞台中央に立ち、女たちもはじまりと同じようにチェアの前に立っている。冒頭では床にあったリンゴがここでは天井から激しく落下し、「ゴツッ」と鈍い音をたてて潰れる。再び缶ジュースが配られ、暗転後に缶ジュースの開く音と自殺した女のセリフが切なく響く…。刈馬は「缶ジュース」に現代の「パンドラの箱」をイメージしたという。現代らしいモチーフに「希望は残りえるのか」という問いをこめているのだろうか。

本作品は「障害者向けデリバリーヘルス」という難しい問題をテーマにしているようだが、刈馬は『描きたいのは-中略-「心と身体の割り切れなさ」…』と語っている(公演リーフレットより)。重いテーマを突破口として選び取りながらも、素直な「今」を表現しているのかも知れない。「今、感じること」を「心と身体」の関係性から炙り出し、「リンゴ」という象徴を用いながら両者をつないだ。
リンゴは智恵の実であり、「禁断の実」でもあった。男は女の誘惑(女はヘビの誘惑)によってそれを口にし、楽園を追われる=原罪)。セックスが、神の一部から創られた原本・アダムの再生産行為だとしたら、私たちはセックスという複写行為により、この身体に原罪を受け継いだのかも知れない。原初の罪を経験せずにその重さを知っているという感覚は、実体験を得ずにヴァーチャル体験によって不知を既知しているという私たちの生活と重なってはいないだろうか。「セックスしてえなぁ!」繰り返されるそんなセリフの連続に、そんな虚しさを思わせられた。

   文責/Arts&Theater→Literacy:かめだけいこ

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2006年11月26日 08:57に投稿されたエントリーのページです。

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