どの業界でもそうだが、同世代同士の競い合いほど
はたで見ていて面白いものはない。
2000年以降、演劇界は「演出とは何か」の問いへの
思考を深めていったが、今、三十歳前後の世代は
私たち先行世代の仕事を踏まえつつ、
「演出とは何か」について飛躍的にその思考を深め、
果敢に実践へと取り組んでいるように思う。
そうした「若き野心的な演出家」の一人にshelfの矢野靖人も入る。
矢野演出は安定的に良質であるとはまだ言えないが、
良質であろうと格闘しているのは一目瞭然(見ればワカル)であり、
その戦いっぷりは見ていて非常に示唆されるものがある。
逆に言うなら、今この段階の演出家だからこそ出る魅力というものが
現在の矢野演出作品にはある。おそらくそれはいずれ失われる。
安定性の獲得と共に。若き芸術家の進化を見届けるなら今だ。
古典作品に取り組む演出家とは、名作という名の巨大な化け物に
挑む徒手空拳の冒険家である。そのスリルとサスペンス!
その冒険に僕の最も信頼する俳優の一人である三橋麻子が
クルーとして参加することになった。彼女ならば矢野演出を
がっちりと支えてくれるだろう。もちろん矢野君が彼女を
使いこなせればだが。と、ここは挑発的に言っておこう。
それはshelfと矢野君への期待感の現れと思ってもらっていい。
倉迫康史(ort-d.d代表、演出家)