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稽古場レポート 3日目

今日は朝から冷え込んで、今年一番の寒さだ。
何を差し入れしようか考え、池袋西武『味咲き』の鯛焼きを持って行く事に決めた。
小倉餡&クリームチーズが入っていて、一口かぶりつくと、なにこれ?ヤベえ!なのだ。

演出の矢野君は休憩時間をあまり取らないタイプの演出家なので、朝から稽古をしている俳優達は、多分お腹を空かせているだろう。
いつの間にか夜が早くなっていた。クリスマスの飾りつけをした池袋の街を、心配しながら急ぐ。

稽古場には18時過ぎに到着。
皆は衣装を着ていた。
演出家が衣装さんに要望を伝えている間、休憩のような雰囲気になっている。

衣装を脱いだ俳優達に鯛焼きを配る。
皆、ヤベえ!ヤベえ!と言いながらむさぼりつく、一瞬で無くなる差し入れ。阿鼻叫喚。
嘘です。
美味しい美味しいと、とても上品にお食べ下さりました。

しばらくして稽古再開。
が、空気が重い。
うまくはいってないらしい。
どうにかしようと抗うのだが、どうにも良い方向に転がっていかない。

ずっと稽古をしているとこういう停滞する時期が必ず襲ってくる。

集中する為暖房を切るが、他の部屋からの雑音が聞こえてくる。
どうも昨日までの稽古場とは勝手が違う。

周りを意識し、その空間にあるイレギュラーな壁や音やモノさえも意識するよう訓練している俳優達にとって、この稽古場に馴染むには時間が足りない気がした。
優秀な俳優程、空間に影響される。

意識と身体と言葉のズレが、演出のズレにまで少しずつ拡大していく。
それに必死で抵抗していけばいくほど、物語は暗く真面目になってしまう。
真面目「だけ」になった俳優ほどつまらない者はいない。
「だけ」になった俳優は今までの経験を元に演技プランを立ててくる。
客演の多いshelfでそれは、いきおい自分達の所属している集団の表現になる事を意味する。
「shelfの表現は?」「shelfって何?」

焦りだけがつのっていく。
そこに居る全員が、周りの雑音を切り捨てるように、個人的な事柄に終始してしまったように思う。

「最後は圧倒的なカタルシスにしたい」と演出家が言う。
しかしこの空気や関係を良い方向に持って行かなければ、そのカタルシスは無い。
俳優と演出家にとってこの日は最悪の一日なのだろう。

だが、
観客の僕には、作品と稽古場が初めてリンクしてきた、そんな気がした。
カタルシスの解放の前には、耐え忍ぶ時間が無いとけっして成立しない。
この作品のカタルシスさえ作れれば、この稽古場はうまく転がっていく。
そう思ったんだ。
だから僕はいつも通りへらへら笑っていた。

名古屋に行く頃にはきっと、夜はもっと早くなり、もっともっと冷え込んでくるのだろう。
それを吹き飛ばすカタルシスが欲しいと切に願う。
マッチ売りの少女が灯す、一擦りのマッチの明かりのように、明日も稽古場に差し入れを持って行くのだ。

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2006年11月28日 12:28に投稿されたエントリーのページです。

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