演劇の力 / 集団の魅力 ― shelfのこれまでとこれからについて

エッセイ
矢野靖人






  演劇の力は単に魅力的な俳優、卓抜な演出にあるだけでなく、時間をかけて蓄積され、集団に共有された身体の文法、時間と空間を構築する身体の「文体」とでもいうべきものにあるのではないかと思う。あるいは、人が人と時間を共にすることで、身体に澱のように堆積していく経験と知に。

 2002年2月、shelfは東京で演出家と俳優一人の二人のユニットとして活動を開始した。今から7年前のことだ。

 振り返ってみると、それからの活動は三つの時期に分けられると思う。最初の三年間、客演俳優を集めてプロデュース公演を繰り返していた時期。短い時間で如何に集団性を獲得するか。試行錯誤して独自の方法を身につけた。集まった集団で都度ワークショップを行い、一定の期間を経てその集団、その集団にユニークな身体の文法をお互いの関係から確立する、というそのスタイルは、今もshelfの創作プロセスの中心を成している。

 それから所属メンバーが入れ替わり、2006年、現在最古参の劇団員で俳優の川渕優子が入団し、ついで音響志望のスタッフと俳優の大川みな子が参加した。俳優はたったの2人、スタッフと自分を入れても4人という小さな集団だったが、私は集団を率いることで、集団での活動を通してしか学べないことがあることを知った。

 それから翌年、2007年の末に行われた七ツ寺共同スタジオ35周年記念企画での長期間に渡る滞在制作を経て、新たな俳優が2名参加した。メンバーが7人になってからの一年間(2008年)は、自分たちの集団性を深め、普遍性を獲得することを目指した一年だった。東京公演だけでなくいろいろな地域へと出かけた。できる限り多くの他者の視線に晒されよう、表現の強度を高めよう。8月に富山県利賀村で行われた演劇人コンクール2008(主催/舞台芸術財団演劇人会議)に参加し、10月には名古屋で三度目になる七ツ寺共同スタジオでの公演を行った。旅の一年目に、利賀で上演した『Little Eyolf―ちいさなエイヨルフ―』で川渕優子が演劇人コンクール<最優秀演劇人賞>を、同作品名古屋公演で、名古屋市民芸術祭<審査員特別賞>を、と二つ続けて大きな賞を戴けたことは少々出来すぎというしかないが、自分たちが今、自分たちの表現においていちばん大切にしていること、及びその方向性が決して間違っていないということを認められたようで、活動を続けていく上での大きな励みとなった。

 演劇は集団の芸術である。しかしそれだけではない。芸術である以前に、もっと大きなもの ―人と人、人と社会の相克を描き、関わり方を検証するための一つの「形式」だ。劇団をつくり、集団創作という、非常な時間と手間のかかる面倒なプロセスを通して創作を行うことの意義と可能性、即ち演劇という形式の意義と可能性はそこにある。

 私は今、このようにして集団の力と可能性を信じている。この力をより深めることを通して、私たちはこれからも舞台芸術の発展に寄与していきたいと思っている。

shelf 矢野靖人

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初出 名古屋市演劇練習館機関紙アクテノン No.61(2009.2.25発行)
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